最近、カルシウム（Ca)が不足すると「イライラする」、「ストレスに抵抗できなくなる」などと精神の活動に対するカルシウムの関係が取り立たされています。本当にそうなんでしょうか？体にとってCaはとても大切な成分です。特に歯にとってはそのほとんどがCaでできていると言っても過言ではありません。人間の体は長い進化の過程でいろいろな点で非常によくできています。したがってそんなに大切なCaは不足しないようにうまく工夫されているはずです。Caの血中濃度が低下するとそれを補うようにうまくできています。つまりからだの中にCaが不足したときに備えて蓄えがあります。Caがたくさん体の中に入ってきたときには蓄えておき、不足しているときには放出します。その備蓄庫は「骨」です。そのおかげでCaの血中濃度は安定するようになっています。したがって「最近Ca不足でイライラする」と言う実感はわかないはずと思うのですが、、、、。
　もしかして「栄養調査で日本人にはCaが不足している」ことと「日本人はストレス社会でいつもイライラしている」ことを単純に結びつけたのでしょうか？Ca不足がイライラさせるのを心配した方々が風呂上りにコップ一杯の牛乳を飲んでストレスに強くなろうとしたら、その結果、健康診断で「高脂血症」を指摘される人が増えてしまいました。牛乳は寝る前に飲むものではないようです。いずれにしてもCaを有効に体内で利用するにはビタミンDと適度な日光浴が必要ということは医学的に証明されていますが、「Caが不足するとイライラするようになる」ことは医学的に証明されていないようです。

木藤久嗣